Loading...

意外と高額? 腰の負担を軽減するHALの価格と性能

介護用ロボットとして一躍脚光を浴びたサイバーダイン株式会社の『HAL®』。いくつかラインアップはありますが、特に注目されているのが、介護スタッフの体に直接装着することで腰にかかる負担を軽減することができる『HAL®介護支援用(腰タイプ)』です。2015年度から始まった介護ロボット等導入支援特別事業により、規定を満たす事業所が『HAL®介護支援用(腰タイプ)』を購入する際は1台当たり10万円の補助金が支給されることになりました。

とはいうものの、実際にHAL®を使用するならば3年リースで310万円(税込み)以上かかってしまい、補助金が支給されたところで、介護施設には300万円超の支出が余儀なくされます。HAL®はどのような性能を持つのか、本当に300万円超支払う価値があるのか、実際にHALを導入している介護事業所の意見等から探ってまいります。

 

HAL®介護支援用(腰タイプ)の性能

ベッドから車いすへ、車いすからベッドへの移乗介助。中腰の姿勢で被介護者を支える入浴介助。介護の世界では腰に負担がかかる作業が多く、介護者自身の体に大きな負担をかけてしまいます。

約3kgのHAL®介護支援用(腰タイプ)を介護者の腰に装着すると、人が体を動かすときに脳から筋肉へ発信される『生体電位信号』をHALが読み取って、介護者の動きに合わせて自動的に作業をアシストしてくれます。そのため、介護者はHAL®を操作する必要はまったくなく、ただ装着して思い通りに体を動かすだけで、いつもの作業が楽になるのです。

また、HAL®にはバッテリーが内蔵されていますので、コンセントを利用しなくても、いつでもどこでも活用することができます。45分の充電で約3時間駆動させることができますので、長時間の作業にも充電タイムを取る必要はありません。

出典:サイバーダイン株式会社

HAL®の価格は適性か

HAL®介護支援用(腰タイプ)は初期費用に108,000円(税込み)、月々の費用に84,240円(税込み)かかります。初期費用は介護ロボット等導入支援特別事業の助成金で補うとすると、1台あたり月々84,240円のみ負担すればよいことになります。常勤の介護職員の平均月給が21万円~26万円ですので、概算すると介護職員3分の1人分のコストといえるでしょう。もちろんHAL®介護支援用(腰タイプ)自身は作業を行うことができませんので、スタッフの3分の1人分の仕事をこなすことは不可能です。ですが、腰痛で離職する介護スタッフを食い止めることができるなら、HAL®を導入する価値は充分にあると言えるでしょう。実際にHAL®介護支援用(腰タイプ)を使用している介護スタッフは、HAL®に対してどのような感想を持っているでしょうか。

上下の運動には優れた効果が

移乗介助や入浴介助など、中腰で被介護者を抱える姿勢の時にHAL®介護支援用(腰タイプ)を装着していると、確かに腰に負担を抱えにくいという声を聞かれます。ただ、腰回りに直接装着するために、慣れないうちは、左右に動くときにHAL®を周辺の壁や被介護者にぶつけてしまったりすることもあるようです。また、体に密着させて使用しますので、長時間使用すると蒸れて暑いという声もあります。

HAL®を使ったデモンストレーションでは、30kgほどの米を楽々と運ぶ様子が見られます。このように上下(米を持ち上げる)やまっすぐに移動(米を持ったまま歩く)などの直線的な動きをするときはHAL®の力を最大限に感じることができますが、日常生活における介護の場面では、腰をひねる姿勢になることや斜めの動き(ベッドから90度回転させて車いすに移動する等)をすることが多くありますので、デモンストレーションほどにはHAL®の能力を感じにくいのではと思わざるを得ません。

とはいえ、毎日の作業が少しでも軽くなることは喜ばしいことでもあります。介護を受ける人の幸せを追求することももちろん大切ですが、介護を提供する人の幸せを追求することも金銭には代えがたいことだと言えるでしょう。