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スポーツIoT革命が来る!

6月15日(日本時間16日)、米マーリンズのイチローが、日米通算で4256安打という大リーグ最多安打記録を更新する偉業を成し遂げました。彼の才能を疑う人はいませんが、彼の逸話を知ると、誰よりも努力家であることがわかります。失敗した経験をおろそかにせず、分析して次の打席に生かしているのです。ん?データの蓄積と分析? これはビッグデータに通じる話ですね。そこでビッグデータやIoTがスポーツの可能性を広げるのかどうかを考察してみました。ITの力で「未来のイチロー」を育成できるのでしょうか?

IoTでスノボに革命を!?

ITとスポーツを結び付けたビジネスは、近年アメリカで大きな盛り上がりを見せています。そして日本でも、少しずつですがITスポーツビジネスを始める企業が出てきました。

たとえば、ベンチャー企業のCerevoでは、スノーボードや自転車にIoTデータを反映させることに注目。パーソナルデータや地域の情報をスマホやインターネットからデータセンターに転送。このビッグデータを収集・解析し、上達に役立てようというのです。

同社のIoTアイテムのひとつが、スノーボード・バインディング「SNOW-1」。計13のセンサーを搭載し、滑っているときの速度や加速度、左右の足の荷重、ボードの反り具合をリアルタイムで計測し、専用のスマホアプリにデータが記録されます。

2015年、アメリカで開催された展示会CESで発表し、現地で大きな反響を呼びました。すでに販売も開始しており、売れ行きは上々とのこと。

同社では野球やサッカーといったメジャースポーツをあえて避けて、スノボに注目しました。なにしろメジャースポーツはすでに世界中の大企業がIT、IoTに乗り出しています。一方、スノボはメジャーではないものの、競技人口は多く、ビジネスチャンスが多いと判断したと思われます。

景色まで再現するスキー練習

日立ソリューションズは同志社大学と組んで、IoTをスキーに生かす取り組みを行いました。スキーの練習はスキー場で行うことがベストですが、オフシーズンや雪が降らないときは屋内で行う場合もあります。

同志社大でも屋内トレーニング器具を保有しており、この器具をIoT化。実際に現地で走行して測定した全地球測位システム(GPS)データや、記録した現地の映像を組み込み、なんと競技コースの地面の傾斜や景色を再現させたのです。これを使えば、実際に海外の競技コースに行かなくても精度の高い練習ができます。

カーレースでも威力を発揮

モータースポーツのように凄まじいスピードの状況下では、人力でデータを計測するのは限界があります。そのため、リアルタイムにデータを計測できるIoT機器は大いに威力を発揮するといえます。

北米最高峰のフォーミュラカーレース「インディカー・シリーズ」では、NTTデータが走行時のドライバーの生体情報を取得する実証を行いました。ドライバーたちは、NTTと東レが共同開発した耐熱性のシャツを着用。これを着ればドライバーの心電波形や心拍、胸部の筋電などをリアルタイムで取得できるのです。今後はここで得られる生体情報とレース走行時の車の状態を掛け合わせた分析を行い、トレーニングやスキルアップ、事故防止に役立てる考えです。

スポーツ大会運営者もIoT活用

スポーツにおけるIoTは、選手たちだけに活用されるものではありません。大会運営者にとっても大きな進化をもたらそうとしています。2月に開催された「東京マラソン2016」。でも、NECのIoT技術が活用されました。

最近、テロの脅威がスポーツ大会を襲うケースが増えつつあります。日本の大会でもそうした脅威を意識した取り組みが増えてきました。警視庁はNECとともに、スポーツ大会を安全で効率的に運営する技術の実証に注力。東京マラソンでは、一般ランナーと並走する警察官「ランニングポリスマン」にIoT機器であるウエアラブルカメラを装着させました。これにより、ランナーの様子や不測の事態の映像を警視庁に即時送信できるようになったのです。加えて、ゴール付近に設置したカメラの映像から、周辺の混雑状況を高精度にリアルタイムに検知する仕組みも試されました。

2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。IoTによるスポーツ革命は、いやがうえにも盛り上がっていくことでしょう。