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スマート林業が向かう未来~前編~

木材の輸入自由化とともに斜陽産業と言われるようになった林業。しかし、近年ではICT活用によって産業の復興に光が見えるだけでなく、豊かな日本の森林の保全の道も開けてくるほか、バイオマス発電による再生可能エネルギーという付加価値が高まってきています。
林業はICTによって未来を変えることができるでしょうか?

 

回復の兆しがある林業の現状

国土の66%が森林である日本は、アメリカ32%、ドイツ30%と比較しても世界でトップクラスの「森の国」です。2014年に公開された映画「Wood Job!」は都会に住む若者が林業の魅力に目覚めるストーリーですが、この映画によって林業の仕事が改めて注目されました。農林水産省によると同年の木材自給率は31.2%となり、26年ぶりに30%を回復しました。人工林による森林資源が充実し、輸入量の減少の影響もあり自給率が向上しています。
2016年に「森林・林業基本計画」が閣議決定されたのも追い風となっています。2025年までに国産木材を2014年の実績の約1.7倍にあたる4000万㎥と掲げており、自給率は50%になると見込んでいます。

バイオマス発電への期待

さらに、木材は二酸化炭素削減の貢献にも注目が集まっています。バイオマス発電とは、動植物からの有機性エネルギーを利用して発電します。伐採して使用されないままの木材を燃やしてエネルギーに変換した時に発生する二酸化炭素は、森林の樹木が光合成の際に吸収するので、カーボンニュートラル(二酸化炭素増加に影響を与えない)とされています。
また、今まで使用されず廃棄していた木材がエネルギーに変換されるため、廃棄物も減らせる循環社会に貢献すると言われています。
こうした木質バイオマスを活用するためにも、森林の整備が急務となっています。年間2,000万㎥もの未利用の間伐材や林地残材が発生しており、こうしたものが再生可能エネルギーとして活用できれば森林が拡大し、雇用の拡大も期待できます。

林業にICTが求められるワケ

スマート林業としてICTの活用が期待されています。ICTはどのような効力を発揮するのでしょうか。
岡山県真庭市では「真庭の森林を活かすICT地域づくりプロジェクト」として2013年よりICTを活用した林業の取り組みに着手しており、2017年には約200人の新規雇用と20億円の経済効果を見込んでいます。この岡山県真庭市の事例におけるICT活用で期待される効果としては以下のものがあります。

  • 森林の見える化と担い手の不足の解消

林業が行われる地域では特に人口減少が深刻となっています。国勢調査によると1960年代には約44万人いた林業の担い手が2012年には5万人にまで減少しており、人材が慢性的に不足しています。
少ない人材を効率的に配置するには、森林の状態をデータ化する必要があります。広大な森林で木の成長具合をみてどこを伐採するかは調査と測量が必要で、それを従来では人海戦術でこなしていました。これがデジタル化されることで効率的な人員の配置が可能となります。
苗から丹精込めて育てた木が伐採できるまで育つのに要する時間が50年を超えることも有ります。自分の仕事の成果が出るのは自分の次の世代になるかもしれないという、サイクルが非常に長い仕事です。こうした長いサイクルでデータを管理するためにも、ICTの力が不可欠なのです。

  • 材木のサプライチェーン

林業は輸入材にも押され、国内の材木のサプライチェーンが確立されていませんでした。現在は真庭市のように地域ごとの取り組みはあるものの、大量の供給に応えるような仕組みが存在しませんでした。また、今注目されているバイオマス発電のために必要となる林地残材や間伐材を調達し、買い取りを行う仕組みも必要となってきます。
【スマート林業:2】経済効果20億、ICTが森林をお金に換える!
スマート林業は森林面積の多い日本にとって、大きな可能性を秘めています。最近では「林業女子会」という林業に携わる人や興味のある人が集まって、女子目線で林業を盛り立てる試みも広がってきており、新しいビジネスの創出も期待できそうです。

後編は林業のどの部分でITが活用されているのか、具体的な例をご紹介したいと思います。

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