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医療界のAI化が凄い!Watsonの現状と将来的展望(後編)

IBMのコグニティブ・コンピューティング・システム『Watson』は、人類の敵とも呼ばれる『がん』の治療においても活用されています。また、近年、多額の国家予算を割いて実施されるプライマリヘルスケア領域における活用についても見ていきましょう。

がん治療でも大きく前進!

Watsonに収められた膨大な医療データや研究論文などから、患者さんの医療データや属性と照らし合わせ、最適な治療方針や医薬品を選定するシステムを、アメリカとカナダにある14の医療機関が中心となって開発を行っています。

少しでも早期に治療を開始することが、がん治療には求められています。しかしながら、有効性を確かめるために何種類もの生体検査を含む検査を実施しなくてはならず、治療方針を確定して実際の治療を開始するまでに数週間かかってしまい、その間に転移が起こったり深刻度が増してしまったりすることも少なくありません。Watsonの活用によって診断から治療までの時間が大幅に削減されれば、治療率も延命年数も大きく上昇すると期待できるでしょう。

Clinicians Tap Watson to Accelerate DNA Analysis and Inform Personalized Treatment Options for Patients(リンク先英文記事)

予防活動をサポート!『プライマリヘルスケア領域』

包括的医療や全人的医療とも呼ばれるプライマリヘルスケア。具体的には地域に根付いた予防活動を指していることが多いです。全ての人が健康で質の高い生活を享受できるために、多くの先進諸国がプライマリヘルスケア領域に国家予算を大きく割いているのです。

遺伝子解析を行う企業『Pathway Genomics』は、IBMのWatson部門と協力して個人向けのヘルスケアアプリ『Pathway Genomics OME』を開発しています。これは遺伝子検査の結果や医学的習慣から利用者個人に向けたアドバイスを行うことを目的としていますが、将来的には、ウェアラブル機器と連携させることでより詳細な情報をインストールできたり、個人の保険情報などの関連情報と組み合わせたりすることも構想されています。

このようなアプリを通して各自が最適な健康活動を行って行くことが実現すれば、生活習慣に起因する疾病などの罹患率が下がり、結果的には健康寿命の延びと国家医療費の軽減が期待できるでしょう。

IBMとPathway Genomics、「Watson」を活用したヘルスケアアプリのα版をリリース

将来的には、地域医療の充実にWatsonの活躍が期待される

どこの国でも、医療の一極化が問題になっています。地域によって受けられる治療に差があり、治療の質も選択の幅も、都市部の人々の方が地方の人々より有利になっているのです。

このような医療の地域差問題も、Watsonを活用した診療・治療システムが充実することでほぼ解消することができると予想されています。地域の診療所でもWatsonと接続した端末を使うことで、大規模病院や専門病院並みの詳細な診断が行えるようになるでしょう。もちろん、その地域では受けられない治療が必要だということが判明したときには患者さんは移動しなくてはなりませんが、入院を必要としない治療や投薬で完治・改善が見込める疾病のときは地域の診療所で治療を続けることができるのです。

また、現在開発中のPathway Genomics OMEが完成し、日本でも個人利用が定着して普及するようになれば、登録者の中から『こまめに検査を受ける必要がある群』を抽出し、メールやハガキなどの媒体を利用して、個人的に病院や自治体から検査を受けるように勧告することも可能になるでしょう。

がんを始めとする現代人の生活を脅かす多くの疾病は、早期発見・早期治療こそが完治への近道となります。現在、多岐にわたって応用されていることからも、早期発見と早期治療には膨大な症例と研究結果のデータベースを解析するWatsonならではのコグニティブ・コンピューティング技術は非常に適していると言えるでしょう。今後の医療界を大きく変え、明るい未来を創出していくためには、Watsonなどの人工知能が欠かせない存在だと結論することができるのです。

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