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医療界のAI化が凄い!Watsonの現状と将来的展望(中編)

IBMのコグニティブ・コンピューティング・システム『Watson』は、医療界においても幅広く利用されています。優れた学習機能やデータ処理機能を活かして、病名の特定や文献分析を行っています。

最近では、新薬開発分野においても大きく貢献しています。非臨床研究においてもWatsonは成果を上げていますが、新薬開発の中でも特に時間と手間がかかる臨床研究、いわゆる治験においても大きな成果を上げています。

治験分野も、人工知能で大きく時間を短縮

医薬品を開発しても、非臨床試験と臨床試験を実施して効果を確認し、追跡調査によって安全性が確定されるまでは、『新薬』として医療機関で使用されることはありません。問題点がある度に非臨床試験をやり直し、人体に適用できることが証明されてから臨床試験、いわゆる治験を行いますので、開発から市場まで10年~20年の時間がかかります

臨床試験を行う場合、協力する医療機関から新薬の対象となるクライアントをピックアップします。医師から直接「このクライアントに治験を依頼するのはどうですか?」と紹介されることもありますが、紹介を受けたクライアントだけではデータの母数が充分でないケースがほとんどですので、治験コーディネーターが病院に収められている膨大なカルテから、該当すると思われるクライアントをピックアップする必要性が生じます。

また、それでもデータ母数が足りずに、治験対象者を一般公募することもあります。いずれにしても、クライアントの属性(年齢や肥満度、喫煙の有無、運動程度など)や病状(深刻度、新薬で治療対象となる疾病以外の病気の有無、既往歴など)、その他の事項(アレルギーの有無、医薬品に対して拒否反応や副作用が出たことがあるかなど)などの数多くのチェック項目を、膨大な数のクライアント1人1人に対して検討して治験対象者を選んでいかねばなりませんので、非常に骨が折れる作業となるのです。

被験者の選出を高速化する『IBM Watson for Clinical Trial Matching』

ですが、IBMが開発した治験マッチングシステム『IBM Watson for Clinical Trial Matching』を活用すると、治験対象者を短時間で選び出すことが可能になります。不足するデータや条件の洗い出しなども瞬時に行うことができますので、治験にかかる作業と時間が短縮され、結果的に新薬開発のスピードを上昇されることができるのです。

実際に、香港の医薬品開発ソリューションサービス企業『ICON Clinical Research Hong Kong Limited』は、IBM Watson for Clinical Trial Matchingを活用して大幅な経費と時間の削減を目指すことを公にしました。IBMが買収したExplorysに登録された5000万人の匿名化されたデータを用い、研究コストの30%削減を目標に掲げています。

IBM Watson for Clinical Trial Matching(リンク先英文記事)
アイコンとIBMが人工知能Watsonで臨床試験実現可能性、患者募集、臨床研究開始を革新

過去のデータから有意な治療法をピックアップ!『治療・投薬領域』

Watsonが適用できる領域は、診断や非臨床試験、臨床試験だけではありません。具体的な治療法を提案することや処方する医薬品を決定することも、Watsonの人工知能の得意分野です。

患者さんの病状や身体的データ(体重やアレルギー、特定の医薬品における反応など)に合わせて、最適な医薬品を最適な量と間隔で処方することも可能です。また、薬歴(今まで使用した医薬品のデータ)と照らし合わせることで、効果を最大限にする医薬品を選び出すことも可能になるのです。

診断や試験のときと同じく、人間には、正確なデータを入力することと欠損している情報を患者さんから聞き出すことなどの人工知能のサポート的な仕事が求められるようになるでしょう。「医療界のAI化が凄い!Watsonの現状と将来的展望(後編)」では、がん治療の領域や予防医学、プライマリヘルスケアの領域でどのような活躍を見せているのかについて説明します。また、将来的展望についても見ていきましょう。

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