台湾のクラシック音楽シーンが熱い:エバーグリーン交響楽団と世界で活躍する名手たち

コンサートホールの舞台に立つエバーグリーン交響楽団

台湾と聞いて思い浮かぶのは、半導体、夜市のグルメ、九份の街並み――そんなところでしょうか。実はいま、クラシック音楽の世界でも台湾の存在感が急速に高まっていることをご存知でしょうか。

国際コンクールを制する若手、世界最大級の劇場施設、そして海運王が遺したユニークなオーケストラ。この記事では、知られざる「クラシック大国・台湾」の現在地を紹介します。

世界のひのき舞台で活躍する台湾出身の名手たち

まず注目したいのが、国際舞台で活躍するヴァイオリニストたちです。

  • レイ・チェン Ray Chen(ヴァイオリン):台北生まれ。2008年のメニューイン国際コンクール、2009年のエリザベート王妃国際コンクールを相次いで制覇。SNSでの発信でも若い世代の人気を集める、いまのクラシック界を代表するスターのひとりです。
  • チョーリャン・リン Cho-Liang Lin(ヴァイオリン):新竹出身。世界の主要オーケストラと共演を重ね、ジュリアード音楽院やライス大学といった名門校で長年後進を育ててきた、台湾出身演奏家の草分け的存在です。
  • ユーチン・ツェン Yu-Chien Tseng(ヴァイオリン):台北生まれ。2015年のチャイコフスキー国際コンクールで、第1位なしの最高位(第2位)に輝きました。台湾人として同コンクール史上最高の成績です。

世代の異なる3人がいずれもトップレベルで活躍している点に、台湾の音楽教育の厚みが表れています。

アジア有数のクラシック・インフラ

演奏家だけではありません。聴く環境も世界水準です。

台北の國家音樂廳(ナショナル・コンサートホール)は1987年開場、台湾クラシックの殿堂として親しまれてきました。2018年には高雄に衛武營國家藝術文化中心がオープン。ひとつ屋根の下にコンサートホールや歌劇院を収めた世界最大級のパフォーミングアーツセンターとして、国際的な話題を集めました。

國家音樂廳を本拠とする國家交響樂團(NSO、1986年設立)は、日本でもおなじみの指揮者、準・メルクル Jun Märkl を音楽監督に迎え、2023年には米国ツアーを行うなど国際的な評価を高めています。

海運王が遺した楽団:エバーグリーン交響楽団

そんな台湾のクラシックシーンで、ひときわユニークな存在がエバーグリーン交響楽団(Evergreen Symphony Orchestra / ESO)です。

「エバーグリーン」の名でピンと来た方もいるかもしれません。母体は、エバー航空(EVA Air)や長榮海運で知られる台湾の長榮グループ。創業者の張榮發が設立した張榮發基金会が2001年に前身となる室内楽団を結成し、2002年に現在の名称となりました。台湾で唯一、民間財団が運営するプロオーケストラです。

ホームの台北では國家音樂廳などの主要ホールで公演を重ねており、活動は台湾国内にとどまりません。これまでに4大陸・12カ国・36都市で90回を超える海外公演を行い、パヴァロッティ、ドミンゴ、カレーラスの「世界三大テノール」をはじめ、ラン・ランなど世界的アーティストとも共演してきました。2026年も世界的バス・バリトンのブリン・ターフェルとの共演やシンガポール公演など、国際的な活動を加速させています。基金会が収集したストラディヴァリ一族・グァルネリ一族の工房によるヴァイオリンなどの名器を楽団員に貸与しているのも、財団運営ならではの特色です。

そして2025年には、前ニューヨーク・フィルハーモニック音楽監督のヤープ・ヴァン・ズヴェーデン Jaap van Zweden をアーティスト・イン・レジデンスに迎えました。世界トップクラスの指揮者が継続的にタクトを執ることで、楽団は新しい黄金期を迎えつつあります。

2026年7月21日、その音が東京にやって来る

そのESOが、2026年7月21日(火)、東京芸術劇場 コンサートホールで日本公演を開催します。

指揮はもちろんヴァン・ズヴェーデン。世界的バリトンのトーマス・ハンプソン Thomas Hampson を迎え、マーラーの歌曲集《少年の魔法の角笛》からの5曲と交響曲第1番《巨人》というオール・マーラー・プログラムを披露します。

翌22日(水)には新潟公演(りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館)も予定されている本格的な日本ツアー。急成長する台湾クラシックの「現在地」を、自分の耳で確かめられる絶好の機会です。

▼公演の詳細はこちらの特集ページで紹介しています

台湾のエバーグリーン交響楽団 2026年7月21日 東京公演 特集