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夏の夜空を彩る「花火」。言うまでもなく、日本を代表する風物詩です。その歴史は古く、江戸時代から続く伝統産業です。そのため、いかにも手作業による伝統的な世界を想像しがちですが、実はかなりITの導入が進んでいます。普段では見えにくい、その新技術について触れてみます。

江戸時代に発展した花火

花火はもちろん他国でも打ち上げられていますが、そこに芸術性やエンターテインメント性を持ちこんでいるのは、日本独自かもしれません。江戸時代には、花火そのものを生業にする花火師が登場し、同業者で切磋琢磨していくうちに、現代につながる発展を遂げました。

当時の花火師で有名なのは、「鍵屋」(かぎや)と、そこからのれん分けした「玉屋」(たまや)です。花火を打ち上げたときの「たーまーやー」「かーぎーやー」というかけ声は、この屋号から来たというのは有名な話。ちなみに、玉屋は1843年に大火事を出してしまったことで江戸を追われ、1代限りで失脚。一方、鍵屋は現在にいたるまで15代に渡り続いています。

全国約2割の花火大会がコンピューター制御

江戸時代から続く伝統産業である花火は、アナログなイメージが根強くあります。しかし、実際はIT導入が進んできているのです。花火大会でITの導入が始まったのは20年ほど前からといわれており、2017年現在では全国の花火大会の約2割がITを導入したプログラムで行われているそうです。加えて、その割合も少しずつ増えているといいます。

また、打ち上げ花火用のソフトウェアまで登場しており、こちらはグラフィックによって打ち上げイメージをシミュレーションできるようになっています。そして、点火用のソフトウェアと繋げ、安全確認の後に「Enter」ボタンをポチっと押します。すると、花火が上がるという仕組みになっているのです。
このほかにもソフトは複数ありますが、Javaをプラットフォームにしているものが多いようです。

IT花火大会の先駆者

さて、ITを導入した花火大会の駆者的存在が、株式会社丸玉屋(東京都中央区)。同社では、年間約170件もの花火プロデュースを手掛けています。会場配置を見ながら花火の色、高さ、大きさ、着火してから開くまでの時間などを計算して進行表を作成。それを基に、ひとつひとつ打ち上げる場所とタイミングを専用ソフトでプログラミングしていきます。

また、ITの導入によって打ち上げ現場は省力化するように思えますが、実際は逆だそうです。システム制御では、筒に個別のアドレスを割り振って、打ち上げる玉と対応させる必要があるため、作業量は3倍にもなるといいます。あわせて、同社ではITを使っても機械的で味気ない花火にはならないよう、花火師と協力して昔ながらの情緒を消さないように工夫されています。

IoTや人工知能まで活用する時代に

最後に花火大会を裏方で支えるIoTをご紹介。隅田川花火大会では2017年の第40回大会から、なんと人工知能(AI)やIoTを初めて活用したのです。

AI分野では、画像解析技術のSpectee(スペクティ、東京都新宿区)と連携し、安全対策に取り組みました。こちらはフェイスブックなどSNS上に投稿された膨大な写真や動画をAIが解析し、会場周辺の交通や気象、事故など各種情報を収集します。目の届かないところまで警備を行うため、かつ突発的な災害や事故が起こっても迅速に対処できるようにと、今回実現されたそうです。

またIoT分野では、ITベンチャーのMAMORIO(マモリオ、東京都千代田区)と連携し、観客の遺失物対策を実施しました。ネット通販などで販売している同社の電子タグを貴重品に取り付けることで、アンテナを設置した大会本部に遺失物が届いた時点でタグを感知。持ち主のスマートフォンに知らせる仕組みとなっています。

隅田川花火大会は例年95万人以上の人が訪れる巨大イベント。安全性向上のため、今後の取り組みにも注目が集まります。こうした新技術によって、日本の花火がさらに魅力的なものになってほしいですね。