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4/27-28に開催されたIBM Watson Summit 2017より、IBMクラウドを活用し、リオ五輪の自転車競技「チーム パシュート」で銀メダルの成績を残した米国女子チームの事例を紹介するセッション『リオ五輪でも活躍!「ハードワーク」から「スマートワーク」へ変革を支援するIBMクラウド』をレポートします。

不可能と言われる領域をテクノロジーの力で可能に


まず、チーム パシュートとは日本語では「団体追い抜き」と言われる自転車競技の一種です。2016年のリオ五輪において、米国女子チームは銀メダル、同年の世界選手権では金メダルの成績を残しました。米国チームはそれまで世界ランキング5位に位置し、トップのイギリスに対して12秒の差がありました。この差を覆すため、オリンピック開催の約1年前にこのプロジェクトが立ち上がったのです。



日本アイ・ビー・エム株式会社
クラウド事業統括本部アドバイザリーアーキテクト 佐々木 敦守氏

▼ 不可能を可能にするためにIBMクラウドを活用していただきたい、と語る佐々木氏

女子のチーム パシュートにおいて、「12秒の差」を縮めるために必要なのは4.5%の記録向上です。しかしこの競技で1年間にオリンピック選手が成績を上げることができるのは、一般的に3%が限界、と言われていました。1.5%は筋力トレーニングなどで選手個人の体力を向上させ、1.5%は自転車の風圧抵抗を減少させる、つまりメカニック側で向上させる。これで3%です。
4.5%まで残り1.5%。不可能と言われるこの領域を担ったのがIBMクラウドだったそうです。


オリンピックまで11か月しかない!
短期間のシステム構築にもっとも適していたのは?


最初にIBMへ相談が舞い込んだのが2015年の9月。翌年の夏にはもうオリンピックが開催。この極めて短期間のうちに仕組みを作りたいという要望に応えるためにBluemixを使用したとのこと。

佐々木氏: もしこの時に、「オンプレミスでサーバー作って・・・」としていたら、調達だけで3ヶ月・構築で3ヶ月は使ってしまって、オリンピックの頃にはまだ仕組みができていなかったかもしれません。しかしクラウドを活用することによって即日構築を始めることができました」

プロジェクトチームはまずデータを可視化する仕組みを作り上げ、その後リアルタイム分析を追加。一気にシステムを作り上げるのではなく少しずつ拡張していく、いわゆるアジャイル開発という方法で分析機能をつけました。
「アジャイルで仕組みをどんどん拡張していきながら分析の制度をあげていって成果を上げる。テクノロジーとデータを活用して、クラウドによるイノベーションを起こした事例です」と佐々木氏。

▼ 立ち上げ~オリンピック本番~その後まで、どんどん分析機能が拡張していく様を説明したMAP


BluemixとWatson IoTですべてのデータをリアルタイム分析


それまでチームではどのように分析を行っていたのでしょうか?
まず車載パワーメーターと計測器を各自転車に取り付け、ストップウォッチを使いラップタイムを計測。さらに環境センサーで会場の温度や湿度を計測。このようにデータソースが複数あり、また処理が複雑でパフォーマンスの分析に非常に時間がかかり、必要な分析結果をすぐに利用できないというのが課題でした。つまり、その場では選手に対して「もっと速く!」としかアドバイスできないということです。

これらの問題を解決するためにIBMが用いたソリューションは、Watson IoTで各データをリアルタイムで分析し、サマリーダッシュボードに表示させることでした。パフォーマンスを可視化することで選手のテクニックを向上させ、分析結果をすぐに確認することでチーム全体の戦略に反映し合計4.5%の向上を成し遂げよう、と計画を立てたそうです。

刻一刻と上がってくるさまざまなデータをIBM Bluemixに送る仕組みを作りました。
まず上がってきたデータをWatson IoTプラットフォームを使って回収、大量のデータをリアルタイムで分析することを得意とするApache Sparkというサービスで分析を行う。さらにNonSQLデータを集めるのに非常に適したCloundantに集め、Node.jsというjavaスクリプトを使ってダッシュボードに表示させる。このような仕組みを実装し、選手の状態を即時iPadやラップトップで見られるように。すべてBluemix上のサービスの組み合わせでこのソリューションが実現されたということです。


Bluemixは「イノベーションをおこすためのプラットフォーム」


このチーム パシュートの事例で導入された「Bluemix」について佐々木氏は詳しく説明します。

BluemixというのはIBMのクラウドサービスの総称です。
合計約140種類のAPIサービスが提供されていて、IBMだけでなくサードパーティーのサービスも使えます。オープンソースをどんどん採用しているのもBluemixの特徴です。
また、様々な選択肢があり、たとえばクラウド上で物理サーバーが作りたいというときにはベアメタルという物理サーバーが用意されています。クラウドで物理サーバーがあるのは現在IBMだけです。もちろん仮想サーバーもあり、コンテナ型の仮想化サーバーも、クラウドファウンダリーも用意されています。

イベントのタイトルでもある「Watson」のサービスも今30種類以上ありますが全部Bluemix上から使えます。

佐々木氏: 「IBMはAIとクラウドは表裏一体と考えています。データがないとAIは役立たない。そのデータをあつめるのに1番最適なプラットフォームは何かというとそれがクラウドで、クラウドの上にAIを置いている。そのほかにも多種多様なサービスが用意されています。ただのIaaSとかPaaSだけではなくて、イノベーションをおこすためのプラットフォームとしてクラウドを設計しています。」

▼ 満席の会場


webアプリは「クラウドネイティブ」の時代へ


今までは、1度作ったらなかなか変更ができない、というシステムがメインでした。しかし最近時代は変わり、クラウドネイティブなアプリがどんどん増えてきています。このオリンピックのリアルタイム分析の事例もそうですが、あとから機能を追加したいというときに、サーバーから用意して作るという方法だと非常に効率が悪くビジネスのスピードの速さに追いつけなくなってきます。そういった際に、すでにあるサービスをつなぎ合わせる形で使えるのがBluemixのマイクロサービスアーキテクチャーです。

非常に簡単にシステムが構築できて、後から変更しやすい。Bluemixがあればアプリケーションの開発から運用まですべてクラウド上で行えます。
横展開もしやすく、このチーム パシュートのシステムもスピードスケートやボート競技でも利用されているとのこと。


スポーツチームのクラウド活用から、企業が学ぶべき重要な要素


今までできなかった分析をやるためにクラウドを使う、という発想こそがこの事例から学ぶ最大の要素と言えるでしょう。

佐々木氏: 「コスト削減、というメリットにとらわれてしまうと、なかなか新しいイノベーションは生まれてきません。IBMクラウドはもちろんコスト削減や業務効率化にも貢献します。しかし今まで通りのシステムをただクラウドに置き換えるのではなく、オンプレミスでできないことを始めるため、イノベーションをおこすためにクラウドを使っていただきたいな、と考えています。」

このチーム パシュートのような取り組みを、実践する企業がこれからどんどん増えてくることでしょう。


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