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「ディープラーニング」(深層学習)は、現在さまざまな場面で大きな変革をもたらしています。この人工知能プログラムは、情報の試行錯誤を繰り返すことで急速に応用力を身に付ける仕組み。そのため「疲れ知らず」のコンピューターなら、短時間で膨大な学習を行ってしまいます。では、このディープラーニングの演算能力を、スーパーコンピューター開発に活用したらどうなるか。さらに超高速のスーパーコンピューターができるのではないか。そんな研究開発に向けた動きが出てきました。

狙うはスパコン世界一

2016年11月25日のロイターの報道によると、経済産業省所管の国立研究開発法人、産業技術総合研究所(産総研)が、ディープラーニングの演算能力を活用してスーパーコンピューターの開発に乗り出したことが分かりました。狙うは「スパコン世界一」だそうです。

産総研が開発するスパコンは、「人工知能処理向け大規模・省電力クラウド基盤(ABCI=AI Bridging Cloud Infrastructure)」と名付けられ、深層学習の演算性能は130ペタフロップスを目指しています。スパコンのハードウェアと収容する施設、研究用の設備も含めた事業費は195億円で、この予算は2016度第2次補正予算に計上された国費が投じられています。同事業は2017年度の稼働を目指しています。

各国で繰り広げられるスパコン開発競争

先述の通り、スーパーコンピューターの演算性能を表す単位に「ペタフロップス」という単位が出てきましたが、これは“1ペタフロップスのコンピューターは、毎秒1000兆回の浮動小数点演算能力があること”を表しています。1秒間で1000兆回と聞けば、とにかく凄いというのは伝わってきますが、現在、この数字の大きさを巡って各国が開発競争を繰り広げている模様です。

まず初めに見て行くのは、日本を代表するスーパーコンピューターである「京」。演算性能は10ペタフロップス。10ペタとは10の16乗、つまり「1京」を意味しています。これが名前の由来になっています。スパコンの計算速度を競うランキング「TOP500」において、2011年(6月、11月)に世界一になりました。しかし、各国の追い上げも凄まじく、2016年には7位に順位を落としています。

次に見ていくのは、現在、TOP500で2年連続トップ立っている中国のスパコン「神威・太湖之光」です。演算性能は京を遥かに上回る驚異の93ペタフロップス。ちなみに、中国は2013年に「天河二号」がトップに立って以降、トップの座を堅持し続けています。

ただ、スパコンの性能を評価するランキングはTOP500だけではありません。「Graph500」というのもあり、こちらは大規模グラフ解析の性能を評価するランキングで、単純な計算速度だけでなく、アルゴリズム構築やプログラムといったトータルの処理能力も評価されます。2016年7月、「京」はこのGraph500において世界一を獲得しました。

人工知能による産業活性化を目指す

さて、日本がディープラーニングを使って開発するABCIは、130ペタフロップスを目指しています。これは現在世界一である、中国の神威・太湖之光をも上回る性能です。ディープラーニングは、データを処理すればするほど精度が上がっていくので、飛躍的な進化が期待されるのも納得です。

経済産業省によると、ABCIは東京・お台場にある産総研の施設と東京大学柏キャンパス(千葉県柏市)に設置するとのこと。また、単に処理競争に駆り立てるだけでなく、ビジネス分野での活用機会を増やし、世界的な優位性を確保したいと考えています。想定される利用対象としては、1)自動運転、2)工作機械の運転状況の把握、3)医療診断支援など、人工知能(AI)が必須と考えられている分野が挙げられています。

当サイトでは、ディープラーニングに関する記事を数多く紹介してきました。Googleの「TensorFlow」Amazonの「DSSTNE」などのオープンソースによって、さまざまな産業においての利用が進み、実際に成果を上げています。そしてここに至り、スーパーコンピューターという技術の頂点にあるものに、ディープラーニングが投入されようとしています。まるでSFに登場するようなスーパーコンピューターが、まもなく現実のものになろうとしているのです。