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つい最近まで電車や地下鉄では必ず流れていた「優先席付近での携帯電話のご使用はお控えください」というアナウンス。最近はこういった優先席付近における注意喚起の状況に変化が起き始めているようです。優先席の窓ガラスに貼ってあるステッカーにも「携帯電話の電源はお切りください」の一文が必ず記載されていましたが、現在では「混雑時には電源をお切りください」というように、限定的な表現に変わってきています。もちろん通話のように周囲に迷惑がかかる行為は現在でも控えるべきです。
しかし、優先席付近での携帯電話使用に関するアナウンスに変化が見られているという傾向は、優先席付近でのスマートフォンの使用許可を示唆しているものなのでしょうか。この疑問に対しての確かな根拠は存在するのかという問題にフォーカスし、主な鉄道会社の現在までの対応について探ってまいります。


ペースメーカーの電波による誤作動

そもそも優先席付近で携帯電話の使用を控える旨をアナウンスしていた理由は、優先席にはペースメーカーを装着した人が座ることもあり、ペースメーカーが携帯電話などの電波によって誤作動を起こす可能性があるとされていたからです。

1995年、携帯電話端末などが発する電波によって、ペースメーカーなどの医療機器の機能に影響が及ぶ恐れがあると海外で報道されたことを機に、日本国内でも不要電波問題対策協議会が設置されました。当協議会では700を超える医療機器で実験を実施し、1997年に「医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針」を作成。その後厚生省を通じて各都道府県の衛生主管部や医療機関に周知されたのです。
<参考・参照元>
電波環境協議会:その他の資料|電波環境協議会 EMCC
医療機関における携帯電話等の使用に関する報告書(PDF)

2Gから3Gへの世代交代と電波出力の低下

2003年、首都圏の17の鉄道会社が「優先席付近では携帯電話の電源をお切りください」という文言での告知を始めました。この動きは翌年には関西の鉄道会社も広がりを見せ、優先席付近で携帯の電源を切るのは守るべきマナーとして全国的に知られるようになっていったのです。

ですが、2012年に第2世代(2G)と呼ばれる携帯電話サービスが終了し、第3世代(3G)の時代がやって来ました。第2世代では最大出力が800mwでしたが、第3世代では最大出力が3分の1以下の250mwになり、電波出力が大きく減少し、医療機器等に与えるとされる影響も大幅に減少することになったのです。
<参考・参照元>
第129回 「電車内の携帯電話マナー変更」の話 : IPよもやま話|株式会社 日立システムズネットワークス
電車内の携帯マナー、なぜ「電源オフ」を緩和? 編集委員 小林明|NIKKEI STYLE エンタメ!

実際には3㎝?ほぼ誤作動は起こらない?

2016年に総務省がまとめた資料によると、第3世代以降の携帯電話端末やスマートフォン等の無線LANを内蔵した携帯電話端末では、一部のペースメーカー等の植え込み型医療機器において、最長3㎝ほどの距離で操作した場合に影響が見られたことが報告されています。またすべてのPHS端末については、使用により影響が見られた植え込み型医療機器はなかったことも報告されています。

これは体外におけるペースメーカーでの実証結果であるため、体内に埋め込まれたペースメーカーについては、近くで携帯電話を使用してもほぼ影響はないと言うことができます。もちろん、総務省としては最悪の事態も想定して国民の安全を守らなくてはなりませんので、3㎝でなはく「15㎝以上離すことが望ましい」という一定のゆとりをもたせた指針を掲げていると思われます。以前は22㎝という距離をとるよう推奨していたことからすると、実証実験の結果により大きく安全性が確認されたと言えます。また、PHSについては電波が医療機器に影響をまったく与えないことが分かっていますが、見た目が携帯電話と非常に似ていますので、ペースメーカーを装着している方が不安を感じないように、携帯電話と同様に使用を制限しています。
<参考・参照元>
各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器等へ及ぼす影響を防止するための指針【平成28年度】(PDF)

以上のことを踏まえて、鉄道各社も優先席における対応の変更を始めています。どのような周知を行っているのか、また改善の難しい問題点なども含め後編でご紹介します。

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