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AIの進化は加速し、ついに創作領域まで踏み込んでいます。芸術の分野は論理が通用しない領域ですが、ある年代層の人が心を動かされるモノは何なのか、統計から導き出すのはAIの方が得意かもしれません。そしてAIはいつの時代にも人々の支持を得るホラー映画の製作に挑戦しています。人間の領域に踏み込まれるワクワク感と、恐怖心を感じさせるAIの実力をご紹介しましょう。


ヒトはなぜホラー映画が好きなのか?

ホラー映画を見るとヒトは恐怖心をあおられます。にもかかわらず、何故皆ホラー映画が好きなのでしょうか。
フィンランドの神経科学者Allan Kalueff氏によると、脳が恐怖心を感じる部位と快楽を感じる部位はかなりの部分が重複しているのだそうです。身の危険がないままで恐怖を感じるホラー映画は、快楽に通じるものがあるのです。
その言葉を裏付けるかのように、最近の研究では愛や快感を得られる小脳扁桃を損傷すると恐怖心が妨げられることがわかっています。

AIがホラー映画を作る意味

こうしたことを踏まえて、AIがホラー映画を作る意味を検証してみましょう。イギリスのグリーンライト・エッセンシャル社はホラー映画「Impossible Things」を、脚本からAIと共同で製作しています。ホラー映画ファンのデータを分析し、25歳以下の女性がもっとも恐怖を感じるシチュエーションを判断。その上でシナリオを修正しています。


これはつまり、「売れる映画」をクリエイターの感性に頼るだけでなく、徹底したマーケティングで作りこんでいるということです。AIは象徴的なシーンを盛り込んで自動的に予告編を作成しています。
この映画は製作を開始してから5年経っていますが、資金の目処が立たないためクラウドファンディング「Kickstater」で投資を募集しています。ちなみに投資者はアソシエイトプロデューサーとしてクレジットされます。

ホラー映画の予告編を作ったWatsonの実力は?

一方でルーク・スコット監督が製作した、AIをテーマにしたホラー映画「Morgan」の予告編を、Watsonが作成しました。


ホラー映画の予告編100本をWatsonに与えて予告編の作り方を学習させ、その後「Morgan」の本編を処理させました。Watsonは本編のなかから10シーンを選び、6分の動画を作成しました。人間が編集して予告編を作ると通常10日~30日かかるところをWatsonは24時間で作成したというのです。
ちなみにこの映画の予告編は人間の作成したバージョンもあります。AIの作成したバージョンと比べてみると、選択しているシーンが驚くほど似通っており、ストーリー仕立てにする判断はWatsonにもできているように感じられます。しかし、一方で予告編に必要なスピード感、カットの積み重ね方などは人間の方がダントツのセンスがあると筆者には感じられました。


AIはヒトの感性を超えるか?

AIの作成したホラー映画ということで2作品ご紹介しましたが、AIがヒトを超える作品を生み出すかというと疑問が残ります。「Impossible Things」では新しいものを創造しているのではなく、ターゲットのニーズを徹底的に分析し、ヒトの作った作品をプロデュースしているように見えます。また、「Morgan」ではヒトのやっていることを高速化できるという領域に踏みとどまっているように思えるのです。しかし、このようなAIと人間の作るものの比較はAIの発展には欠かすことのできない試みであると言えるでしょう。

科学とアートを融合するバイオアーティスト福原志保氏は、「AIは人間を脅かすものではなく、人間と併走するものである」とし、「人間とは何か?という科学では決して答えの出ない問いに、人間と一緒に立ち向かう役割がある」とコメントしています。

AIという”人間の新しいヴァージョン"のような存在をつくることは、結局は「生命とは何か?」「人間とは何か?」との問いに答えようとする作業だと思うんです。でも、その本質がすっこ抜けたまま、いわゆる「機械は人間の知能を超えるのか?」という閉ざされた視点だけでディスカッションがされているから、まだまだAIで遊べていないとわたしは感じているんです。
WIRED VOL.20 私のシンギュラリティ:それぞれの特異点(福原志保)

「ある作品を見たとき、ヒトはどのように感じるのか?」ということを突き詰めていったとき、まったく新しい作品が生まれるかもしれません。そして、それは人間単独でも、AI単独でもなく、共同でこそ生み出されるに違いありません。