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IT業界における「2025年問題」とは?


あとわずか9年後にやってくる2025年。ここに社会の転機となる「2025年問題」が待ち構えていると言われています。これは団塊の世代が75歳以上に達し、厚生労働省の社会保障給付総額が144兆円になってしまう事態のこと。詳しくは「日本に迫りくる2025年問題~ITにその解決策が期待される時代」を参照してみてください。さて、「2025年問題」と呼ばれるものにはいくつかあり、本記事ではIT業界における「2025年問題」について触れてみます。

昭和元年からちょうど100年後でトラブル発生?

2025年は、昭和元年(1925年)から100年後に当たる年になります。このことでトラブルが発生する可能性が指摘されています。というのも官公庁や金融機関、大企業では、相当早い時期にコンピューターの導入が進んでいましたが、このときのシステムでは昭和2桁で表現しているものがほとんどでした。日本の公文書においては年を記載する際、全てにおいて西暦でなく昭和を用いることになっていたからです。

一部のソフトウェアではそのレガシーが引き継がれ、平成になってからも、ソフトウェア内部では昭和の延長として処理しているものもあります。すると、昭和100年にあたる2025年のとき、昭和99年から昭和00年に戻り、「2000年問題」と類似した誤動作を起こす恐れがあるのです。とはいうものの、年を昭和で表現しているシステムは現時点ではほとんど存在していないので、この問題が起きるのはごくごく少数と思われます。

ちなみに、2000年問題のときは、特別大きなトラブルがありませんでした。だからといって、安心はできません。あのときはトラブル回避のため、多くの企業が対策を行ったからです。たとえば鉄道会社や航空会社は不測の事態を避けるため、2000年1月1日のときは時刻変更をしたり欠航したりしたほどです。それでも、郵便貯金ATM約1,200台が停止するという事態が起こりました。

既存の電話網とISDNが廃止になる

もはや携帯電話が当たり前になり、インターネットも光回線が当たり前の時代。しかし、当然ながら、かつての電話網やISDN回線もまだ存在しています。ところが、これらは段階的に廃止の方向に持って行っており、2025年には消滅する予定になっているのです。

もう少し具体的に述べます。電話回線を管理しているNTT東日本とNTT西日本は、加入電話やISDNなど既存の公衆交換電話網(PSTN)を、2020年頃からIP網へ移行していきます。そして、PSTN交換機が寿命を迎える2025年までに移行を完了するとしています。

これにより既存の加入電話網やISDNは廃止となり、これらをビジネスに利用している企業としては、IP網への移行を考える必要が出てきます。ISDNは2010年3月末時点で509万2000回線(東西NTT合計)の契約があります。これらがあと9年後に使えなくなってしまうわけですが、資本力に乏しい企業にとっては大きな出費になります。まさに「2025年問題」です。

では、「2025年問題」で実際に困ってしまう企業とはどんなところなんでしょうか。もっとも直接影響を受ける業務としては、「電子データ交換」(EDI:Electronic Data Interchange)が挙げられます。EDIは、企業間で電子的にデータを交換する仕組みのことで、受発注や見積もり・決済・入出荷などに関わるデータを、予め定められた形式にしたがって電子化し、ネットワークを通じて送受信する仕組みです。

外国との取引で利用している場合に多いのですが、古いインフラに合わせるために、そのまま電話網やISDNを使って送受信しているケースも結構あるのです。この場合、「2025年問題」によって利用できなくなりますので、IP網やインターネットを利用したEDIに順次乗り換えていく必要があります。

2015年まで、あとわずか9年。規模は異なるとはいえ、2000年問題のときと同様に、それなりの対策は必要でしょう。