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2025年問題~AIは生産労働人口の減少を補う起死回生のツールになるか?

日本は2020年に東京オリンピックを控え、ここからは経済も成長軌道に乗ることが期待されている。しかし、実はその後の2025年には、先進国ではこれまで経験したことのないような高齢化と人口減少社会に直面することになる。こうした社会を根底から支えるものとして急激に注目されつつあるのがAIの積極利用なのだ。

 

そもそも2025年問題とは…

2025年問題が騒がれだしたのは比較的最近のことだが、800万人存在するという団塊の世代がいよいよ後期高齢者の年齢を迎えるのがこの2025年なのである。人口減少が進む中、後期高齢者がじつに全人口の4分の1を占めることになる、これまでどの国でも経験したことのないすさまじい高齢化の状況となるのが2025年問題の本質だ。

2025年には日本の人口は700万人減少し、15歳から64歳の生産年齢人口が7000万人まで落ち込む一方で、65歳以上が3500万人を突破し3人に一人が65歳以上となるわけだから、かなり活力のない社会が示現することは間違いない。東京五輪が終わった2020年のあと、日本の姿は大きく変わろうとしている。現在と同水準の人口を維持できるのは、東京・神奈川・千葉・埼玉の首都圏と、愛知・沖縄・滋賀のみで、青森・岩手・秋田・山形・福島の東北各県や、中四国の大半の県は、軒並み1割人口を減らすという、衝撃的なデータも開示されはじめている。

労働力不足を補うことに期待が高まるAI

この国は働き方も、これまで経験したことのないような大きな変化に見舞われようとしている。厚生労働省のデータによれば、既に過去10年間で、事務職や工業系技術者は14%、農家や漁師は30%、また土木作業者や建設技術者は40%も減少。介護や葬儀関連に従事する労働者は増加の一途をたどっており、労働力不足はいよいよ深刻化しつつある。米国のように移民により労働力を確保することに舵を切ることができれば、生産労働人口の枯渇問題はかなり改善することが見込まれるだろう。しかし島国の日本は外人労働者が定着し帰化することに非常に抵抗感をもっている国民が多く、足元のEUでも大揉めの移民問題は短期間では解決しない。さらに国民のマジョリティが高齢者となると、こうした変化を強く嫌う向きも多く、移民による労働力不足が改善されるのはほんのごく一部の仕事だけとなる可能性が高い。

人からAI労働力へのリプレイスは既にはじまっている

そんな中で俄然注目されるのがAIが人の代わりをしてくれる社会の到来だ。
これまでは「人の仕事をコンピュータが取って代わること」が、異常とも思えるほど危惧されてきた。しかし、AIというものは一定以上の管理を必要とするので、それが社会に普及することで、新たに創出される仕事も期待できるのだ。もちろんホワイトカラーひとつとってみても、その職務要件は多岐にわたっており、AIがリプレイスできるような比較的プロセスが単純化される仕事と、人間が関わらなくては解決ができない仕事が共存している。人間のほうに求められる職務要件はコモディティ化されてきたものよりも複雑なものが要求されることは間違いない。しかし、AIに取って代わられるのではなく、使いこなすことができる社会を作り出すことができれば、2025年に差し迫った労働力不足を大きく解決に導くことが可能となるのだ。
たとえばコールセンター業務は比較的若くて対応力のある人材の活用が求められてきたが、一部の業務はAIを利用したものへとトランスフォームしようとしている。大手メガバンクのほとんどがIBMのWatsonを利用したAIコールセンターを立ち上げており、その精度は日々進化しつある。人はより、人にしかできない領域の業務に集約することができ、労働力不足を大きく解消する手立てになることが期待されているのだ。

AIの利用はまだ始まったばかりの状況だが、飛躍的なスピードで示現する高齢化社会を乗り越える切り札となる可能性はきわめて高い。今度のAI利用の進化に大いに期待したい。