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一歩先を行く海外スマートシティ事例

「国内のスマートシティ構想はどこまで進んでいるか?」では、日本で進められているスマートシティ構想について触れました。今度は、海外の現状と事例について見て行きます。デンマークの事例などを見ると、すでにスマートシティが実現していて驚きます。

次世代都市プロジェクトと再開発都市プロジェクト

スマートシティは、世界中で取り組まれているプロジェクトですが、新興国と先進国では状況が異なります。経済成長が著しい中国などの新興国では、新しく都市を形成する「次世代都市プロジェクト」がメインとなっています。元々何もない空き地に一から都市を作り上げていくので、開発を急ピッチで進められる特徴があります。

一方、日本や欧米のような先進国では、老朽化した基礎インフラを更新していく「再開発都市プロジェクト」がメインです。生活の流れを止めないで再開発するため、すべてが終了するまでに時間がかかるのが特徴です。費用も時間もかかる再開発都市プロジェクトですが、スマートシティを建設することでエネルギー問題、高齢化社会、経済の再活性化などをまとめて解決できることが期待されています。

「スマートアメリカ チャレンジ」を進める米国

IoT先進国であるアメリカは、スマートシティの建設も積極的。「Nest社から見えてくるIoTの未来」でも触れましたが、家が居住者のライフスタイルを把握して温度管理する発想は、アメリカではかなり前からあります。スマートシティはその発想の延長線上にあるので、活発な動きも納得です。

現在ホワイトハウス直下で、「スマートアメリカ チャレンジ」と名付けたプロジェクトを推進しており、主にスマートホーム、環境、輸送、緊急サービス、ヘルスケア、セキュリティ、省エネ、製造業を対象に産業の活発化を図っています。

そのパイロットプロジェクトとして、カルフォルニア州サンノゼとインテル社が共同で、センサーを活用し水質や騒音、大気の品質などを解析する取組みを実施しています。

またハワイでは、日本のNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)と協力し、風力発電や太陽光発電など再生可能エネルギーの導入を進めています。

インフラの再開発を進めるヨーロッパ

基礎インフラがほとんど整備されているヨーロッパにとって、老朽化した設備の再開発は大きな課題。また日本と同様に、エネルギー不足、人口減少などに直面しており、その解決策としてスマートシティに寄せる期待はかなり大きいです。

EU全体で見ると、2009年に「第三次EU電力自由化指令」というものを打ち出しました。電力を適切に配分するために、IoT機器であるスマートメーターを家庭に導入させるのが目的です。2020年までに需要家庭の80%に普及させることを目指しており、イタリアとスウェーデンではすでにほぼ全戸の導入が完了。今後はスペイン、フランスでの導入に力を入れていく見通しです。

ヨーロッパ各国を個別に見ていくと、イギリス・ロンドンでは、2025年までに90年比でCO2を60%削減するという高い目標を掲げ、風力発電、分散型発電、EV&ヒートポンプ、スマートメーター、ディマンド・サイド・マネージメント(電力供給に合わせて需要を調整すること)の5点をテーマにした実験を開始。これらの実験結果を基に、電力を適切に配分するスマート電力網や、スマートシティにおけるエネルギーインフラの構築を目指しています。

デンマークでは国を挙げて自転車利用を促進中。ほとんどの道には自転車専用レーンが整備されており、日本のように怖い思いをして車道を走る必要がありません。首都コペンハーゲン市では、40%近くの市民が毎日、電車や車の代わりに自転車で通勤通学。ちなみに、電車のなかに自転車を持ち込むこともできます。そして風力発電の比率を高め、省エネルギー型都市を着実に作り上げています。米国のビジネス誌「Fast Company」による欧州スマートシティランキングでは、コペンハーゲン市は第1位に輝いています。

以上のような欧米の動きは、日本のスマートシティ建設においても大いに参考になるところがあります。