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農業とIoTの融合がアツい(前編)

ここ数年の目覚ましいIoT、クラウドの普及は、日本の伝統的な農業スタイルにまで変革をもたらします。
農林水産省は2013年11月にロボット技術や情報通信技術(ICT)を応用したスマート農業の実現に向け、研究会を設置しました。さらに今年3月の「食料・農業・農村基本計画」においてもこの取り組みについて述べられています。
これまでIT技術とはもっとも遠い分野の一つと考えられてきた農業分野にいったい何が起こっているのでしょうか。注目が集まる「農業 × IoT・クラウド」の今をご紹介します。

スマート農業とは?

引用:スマート農業の推進-参議院

まず、スマート農業に関して簡単にご説明します。
スマート農業は日本が国として将来農業のあるべき姿だとして位置付けているものです。明確な定義はありませんが、農林水産省の公表する資料によれば次のような特徴が挙げられます。
1. 超省力・大規模生産
2. 作物の能力を最大限に発揮
3. きつい作業、危険な作業からの解放
4. 誰もが取り組みやすい農業
5. 消費者・需要者に安心と信頼

これらは従来の農業の課題点ともいえます。非常に多くの時間と労働力を人間に依存するのはあまりに非効率だということで、スマート農業を目標として掲げたのです。

スマート農業を達成するためのポイント

現状の課題を克服し、スマート農業を促進するのがIoTやクラウドの普及です。
同公表資料においては達成のためのポイントとして、精密農業、ネットワーク、情報端末、クラウドコンピューティング、リモートセンシング、ロボットが挙げられています。
これらキーワードはいずれも密接な関係があります。たとえば精密農業とは、農地や農作物の状態をよく観察・把握したうえで精密に制御し、次年度の計画を立てるといった農業管理手法のことだそうですが、人の手や目だけで達成しようとしては負荷が大きすぎます。
そこでIoTデバイスを農地へ設置し、ネットワークを通してクラウド上へ情報をアップロードし、別端末からアクセスすることで容易に情報管理が可能となるのです。

スマート農業の課題=IoTの課題
スマート農業を達成することで生産効率は飛躍的に向上します。また、誰もが農業に携わりやすくなり、若い層への農業離れを止めることができます。
そこでいくつかの克服しなければならない課題があります。これらはIoTデバイスやクラウドを実際に農業へと導入していくうえでの課題でもあります。

1. 高コスト
最も大きな障壁となるのはコスト、特に導入時にかかるコストです。
農業ではこれまでもコストが大きな問題として指摘されてきた分野です。たとえばコンバイン1台で数百万~という投資を必要とします。これは農業機械の市場規模が小さいために起こる問題でした。
スマート農業に必要不可欠なIoTデバイスやコンピュータは、数千万円とまではいかなくとも~数百万円程度の初期費用を必要とします。そして何より導入実績がほとんどないために、費用対効果がわかりづらいのです。
当然、導入時以降もメンテナンスや維持のコストはある程度想定されます。この点は非常に重要な課題です。

2. セキュリティ
IoTの普及で必ず課題となるのは、このセキュリティ面です。
データの漏えいや紛失は死活問題となります。近年ではかなり信頼性のあるクラウド(IBM SoftlayerやAWSなど)が普及してきてはいますが、やはり農業分野に限っては導入実績が少ないことがネックでしょう。

3. IT技術への適応
これまで手作業で仕事を行っていた人が急にIoTデバイスを駆使するのは難しいでしょう。適応し、使いこなせるようになるためには時間がかかりますし、サポートも必要となってくるでしょう。いかにユーザーフレンドリーな技術を提供するかが、ソフトウェアなどのベンダーにとっては重要な課題となります。

このように、農業がIoTやクラウドとつながるには、大きなメリットとともにいくつかの課題点が挙げられてきました。
そしてこれらを克服すべく、企業や研究機関は取り組んできました。
次記事では、いよいよ本題の農業分野へのIoT導入事例をご紹介します。きっと、新たな農業の姿がはっきりと、高揚感を持って見えてくるでしょう。

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