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IoTが医療分野でも広がりを見せる。その可能性とは

広がる医療分野へのIoT導入

近年注目があつまるIoT。アメリカの調査会社ガートナーによると、2020年には300億個以上のIoTが世界では普及すると予測しています。
これまではPCやスマートフォン、タブレット端末といったデバイスに限られてきましたが、IoT化の波は様々な分野で広がっています。
その中の一つが医療分野です。2014年、オランダの総合電機大手であるフィリップスは、123年の歴史ある照明事業を分社化し、利益率の高いヘルスケアと消費財部門の事業拡大に注力すると発表しました。ヘルスケアとコンシューマーライフスタイルを統合し、新たに「ヘルステック」として事業を展開することで、日常生活での健康への意識、予防医療、さらには病気にかかった場合の診断と在宅ケアまでを一貫して手掛けるとしています。
アメリカのゼネラル・エレクトリック社も家電から撤退し、現在では売上の10%以上を医療機器が占めています。

医療機器でのIoT開発の中では、すでに製品化されているものもあります。
身体にセンサーを付けて、体温や心拍数、血圧などの生体情報をモニタリングし、ネットワークに繋がるスマートデバイスも身近になりつつあります。
スマートデバイスを使えば、送信された情報を電子カルテとしてタブレット端末で取得し、患者の情報を高速かつ簡単に共有することができるのです。
日常生活での健康や、病院での治療・診断にも、今後IoTは次々と普及していくと予測されます。

医療機器のIoT化につきまとう、メリットとリスクとは

他の分野でのIoT化と同様、医療分野でもさまざまな変化が起こります。
医療分野へIoTが普及すると、次のようなメリットが得られます。

<メリット>
○健康状態の把握および管理がしやすくなる
例えば個々人にウェアラブル機器を装着させることで、装着している本人のみならず周囲の人間もネットワークを通じて健康情報を取得することができます。家族内お互いに健康状態を把握しやすくなったり、あるいは病院内での患者の様態をキャッチしやすくなるといったメリットがあります。また、自動的に情報は更新されるため、急激な様態の変化を素早く読み取ることもできるようになるでしょう。

○医療現場の施設機器費用を大幅に削減できる
IoT化した製品が次から次へと普及することで、医療現場での施設機器へのコストが軽減します。

このようなメリットを享受できる一方で、医療分野へのIoT化ではいくつかのリスクが懸念されています。
<リスク>
・意図的な情報操作およびそれに伴う混乱
ネットワーク上へあがった情報を第三者が意図的に操作する可能性が考えられます。家電製品等とは異なり、医療では情報が命取りとなる場面が非常に多くあります。数値を書き換えるだけで投薬量が変わり、処置が変わります。
感染などの情報も操作されると、瞬時に混乱状態を招く危険性があります。

・機器の故障
ネットワークにつながった機器は、そうでない場合と比べて故障しやすいという傾向があります。

・プライバシー
医療に関する情報の価値は非常に高いとされています。悪意のある何者かによって情報を取得するためにサイバー攻撃を受ける可能性があります。

このようなリスクを回避するためには、以下のような課題点が挙げられます。
◆医療機器およびネットワークのセキュリティ面の強化(実績あるクラウドの活用など)
◆ネットワーク等リスク対策への包括的なアプローチ(セキュリティ標準の設定など)
◆機器の性能・品質向上

リスク面と課題点が克服されることで、医療分野への安心・安全なIoT化が実現されます。

IoT×医療分野 導入事例:片頭痛アプリ

IoTが実際に医療分野へ導入された事例はすでにいくつか存在します。
身近なところではスマートフォンのアプリでも取得できる片頭痛アプリがあります。
シンガポールに拠点を置くHealint社ではビッグデータ分析に基づく「片頭痛」改善アプリ「Migraine Buddy」を提供しています。
(※日本では「片頭痛ろぐ」という名称でリリース)
このアプリは、スマートデバイスを使って記録を行い、患者に片頭痛が起きた状況に関するデータを世界規模で集めます。
このデータの分析により患者が抱える片頭痛の原因の特定と、新薬開発への活用を試みています。

このように、非常に身近なところから大規模な医療施設まで、さまざまな分野でのIoTと医療の融合は始まっているのです。
これから先、10年で医療が大きく変わっていきそうですね。