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オランダで大成功のスマートアグリが、日本の農業を推進する!?

「IoTによる植物工場の活性化に期待」で少しだけ触れましたが、植物工場を含めたスマートアグリの分野ではオランダが世界をリードしています。この話題は最近よく耳にしますが、実際のところどれほどの発展ぶりなのでしょうか。その驚きの先進技術を見ていきます。

自然条件は日本よりも厳しいオランダ

ゆっくりと回る風車の下に広がる色鮮やかなチューリップ。のどかな田園風景のイメージがあるせいか、オランダは元々農業が盛んな国のように感じます。しかし、実は自然条件は日本よりも厳しいのです。

オランダの国土面積は4万1526平方キロメートル。これは日本の約9分の1に相当します。日本は狭い島国ですが、そんな日本が大きく感じてしまうほど小さな国土です。また、山地は少なく平坦な土地が多いですが、それでも耕地面積は日本の4分の1しかありません。曇り空が多いため日照時間が少なく、一年中低温。そして、農業人口は日本の305万人に対して、オランダは43万人と日本の7分の1以下の規模。農業の条件としては、むしろ不利といえる環境です。

今や世界第2位の農業大国に成長!!

そんなオランダが今ではどうでしょうか。農業輸出は日本の30倍に相当する680億ドル(約8兆1400億円)で、アメリカに次いで世界第2位!! しかも、世界最高の黒字額250億ドル(約2兆9900億円)を叩き出すまでに成長を遂げています。日本のスーパーでもオランダ産の大きなピーマンを見かけるようになりました。このオランダの快進撃を可能にしたのがスマートアグリなのです。

スマートアグリには、あらゆるITがフル活用されています。植物工場における温度・湿度・養分の自動管理には、センシング技術やIoTによるネットワーク技術が使われていますし、省エネのために再生可能エネルギーも利用されています。蓄積され続けるビッグデータは、クラウド上で分析され、絶えず進化を続けています。

さらにいくつかのオランダ企業は、豊富なITノウハウをパッケージ化して、海外への事業展開を図っています。例えば、オランダのIT企業デイコムは、NECと共同でビッグデータ事業を世界各地で展開しています。すでに2014年10月、ルーマニアにあるジャガイモ農場で、気象センサーや土壌センサーで計測された環境データを収集。それを解析する実証実験を実施しました。今後は、そのビッグテータを欧州・中東・アフリカの大規模経営農家向けに販売していく予定です。

また、総合電機メーカーのフィリップスも2014年10月、中国のアリババ集団と共同で中国市場におけるクラウドコンピューティングやビッグデータ分析などを行っていくことを発表しました。

スマートアグリが日本の「攻めの農業」を推進!

スマートアグリによってオランダは、「国土が小さくても世界で稼げる農業」を実現させました。このオランダの奇跡に世界中が大注目しています。とくに日本のように国土の狭い国にとっては、可能性の宝庫です。連日あらゆる国の視察関係者がオランダを訪れている中、日本の安倍晋三首相も2014年3月にオランダ・ウエストラント市を訪れ、温室栽培施設としてオランダ最大規模のグリーンポートを視察。ITによる効率的な自動管理、付加価値と収益性の高さに驚いたと報道されました。日本が今後スマートアグリへの可能性を模索していくことは、自然の流れでしょう。そもそも、現在の日本が直面している課題と、オランダがスマートアグリに舵を切ったときの状況がとてもよく似ているのです。

それは1985年のこと。EC(EU欧州連合の前身)に、農業大国であるスペインとポルトガルが加盟することが決定。これにより両国の安い農産物がオランダに大量に押し寄せました。オランダは他国に負けない競争力を身につけるため、ITを活用した農業を推進することになったのです。

一方、日本も今年の10月に環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を12カ国間で大筋合意。今後は米などを除き、ほとんどの農産物の関税が撤廃され、他国から安い野菜や肉製品が入ってきます。一部で危惧されていた“危機”が現実になろうとしています。

しかし、見方を変えればピンチはチャンスにもなります。日本の高品質の農産物を他国に輸出しやすくなるからです。奇しくもかつてのオランダと状況が似ているだけに、スマートアグリの可能性は大きいでしょう。さまざまな企業、ベンチャー、大学などが参入し、日本の「攻めの農業」が活性化することに期待したいです。

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