×
最新の人気コンテンツ情報をまとめた
メールマガジンをお届けします

ページトップへ
プライスウォーターハウスクーパース(以下:PwC)が6月に発表したレポートによれば、AI・人工知能がもたらす経済効果は世界規模で2030年までに、最大15兆7,000億ドル相当となることが試算されている。この金額規模は足元での中国とインドの現在の生産額よりも大きなものであり、市場がさらにAIに注目する時代が世界規模でごく近い将来に到来しそうな状況だ。


PwCのレポート内容

今回発表されたPwCのレポートによると、AIの導入とその積極的な利用は2030年までに世界経済に対して最大15兆7,000億ドルのプラス効果を提供するという、かなり明るい内容である。同時にAI技術でプロセスの自動化を実現することにより、いわゆるデジタルワーカーを創出することで労働力の増加が可能になり、この領域における生産性向上による利益は6兆6000億ドルになるとも試算している。世界経済がすでに成熟化し先進国を中心として大きく成長できない足元の状況を考えればAIの普及と市場の広範な利用拡大は世界規模でのビジネスチャンスをもたらしてくれるものとして期待が高まる内容となっている。

引用元:PwC’s Global Artificial Intelligence Study|Sizing the prize

北米市場はAIに対する準備がかなり整いつつあり、AI利用でさらに生産性が高くなる仕事の割合が多いことから、中国よりも早くAIによる生産性向上を現実のものにできるだろうと推定している。欧州とアジアの先進国地域では、米国に追随する形でAIの導入から大きな利益を得ることができるとされ、国内総生産(以下:GDP)の9%から12%程度の経済の拡大を享受できる見通しだ。

逆に発展途上国は、今後導入が期待されるAI技術の採用率が先進国に比べてはるかに低いことから、プラスのインパクトはGDPの6%以下の緩やかな増加が見込まれている。全体的にみると、先進国でのAI導入はさらに生産性向上に短期間に寄与するものと見込まれるが、開発途上国や現状における大きな消費国である中国などでのAI利用が果たしてどれだけの恩恵をもたらしてくれるのかが今後の注目点となりそうだ。

AIの利用は、もはや競争力を高めるための変革でもあり、あらゆる企業はそのインパクトから免れることはできないことも指摘されている。この分析では小売、金融サービス、医療の分野がAIの恩恵が大きなものとなり、同領域は2030年までに生産性の向上と消費者需要や行動変化が起因しGDPの 約9兆ドルが追加される予定だという。

人間社会を支えるものになるのか一部の人にとっての有益な技術かが問題

今回発表されているPwCのレポート内容は、AIの積極利用を実現することによるポジティブで明るい未来を指し示したものだ。本レポートは中国・大連で開催された、世界経済フォーラムが主催する夏季ダボス会議でも披露されており、同社のAI研究者であるアナンド・ラオ氏は、会議の場で行ったブリーフィングにおいて現在のAIに対する考え方は人間対機械となっているものの、今後人間と機械を組み合わせれば、人間だけによる場合よりかなりプラスに働く可能性があることを将来の姿として描いている旨を強調している。

ただ、本レポートにもあるようにAIの導入による生産性の向上は、すでに人が行う業務で一定以上の生産性が確保されているものを、AIがリプレイスしていく先進国での利用拡大で大きな成果が発揮されることになる。そのため、もともとの生産性が低い国や産業領域では依然として人の仕事が奪われるだけの進化しか遂げられないリスクも残っている。世界全体で、このAI導入による劇的な進化を多くの人たちが等しく、その生産性の向上による経済の拡大を享受できるのかどうかが最大のポイントになりそうだ。

世界的に資産・所得格差が拡大し、一部の富める人のもとにだけお金が集まりはじめる悪しき状況は継続中だ。AIの導入がくれぐれもそれに拍車をかけることがないような、導入と利用の拡大を期待したい。

<参考・参照元>※リンク先英文記事
PwC press room: AI to drive GDP gains of $15.7 trillion with productivity, personalisation improvements|PwC