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前編にて、海上インターネットが急速に発展する可能性があることを紹介しました。後編では、すでに行われている「海上IoT」について見て行きます。現在は個々で行われている小さな動きですが、インフラ設備が整備されていくにつれて、スケールの大きなものになっていくのかもしれません。

NTTドコモのICTブイが海水温を測定

2016年3月、東日本大震災で被災した宮城県東松島市で、NTTドコモによるICTを活用した実証実験が開始しました。これは牡蠣・海苔の養殖漁場において、事業従事者の生産性向上と質の高い水産物の生産を目指す取り組みです。

2011年の震災時、この地で行っていた牡蠣の養殖漁場は、大津波によってあっという間に飲み込まれてしまいました。それでも多くの人々の援助を得て、同年の夏には奇跡的に再開。復興に向けて張り切っていましたが、翌年の2012年には養殖牡蠣の幼生である種ガキの収量が安定しなかったり、牡蠣の成長速度が変わったりと、これまでの経験にないことが次々と起こったのです。

巨大な津波によって、海の状況は激変。攪拌されたことにより、牡蠣のエサになるプランクトンが海全体に行き渡っていました。これ自体はプラス要因ですが、もちろんマイナス要因もあります。そのひとつが海水温の変化です。しかし、この変化をデータとして採取するには、養殖場全体を船で回って海水温を測定する作業が必要となります。その作業時間は約1時間かかり、船の燃料も消費するため人手では限界があります。

こうした状況下で、「東北復興新生支援室」を立ち上げ、現地で交流活動を行っていたNTTドコモが、通信機能やセンサーを搭載したICTブイを養殖場に設置することにしたのです。このICTブイを使用すると、海水温のチェックを毎日自動で行うことができます。また、波が高くて船が出せないときでも測定ができるため、年間を通して抜けの無いデータを取ることができ、養殖業者はスマートフォンやタブレットから専用アプリを使っての水温管理も可能。水温変化の原因をつかむことができれば養殖ノウハウをアレンジでき、より高品質の牡蠣を生産していけます。

NTTドコモでは、将来的にこのノウハウを全国の漁場へ展開することを視野に入れています。省力化が図れるのはもちろんですが、今後データを蓄積していくことでより細かな海洋の変化を明らかにできるかもしれません。

はこだて未来大学の「マリンIT」

ITを漁業に生かすことで漁獲量を安定させることや、海洋の変化に対応させようという動きがあります。そのパイオニア的存在は、公立はこだて未来大学です。同大学では、マリンIT・ラボ所長の和田 雅昭教授を中心に、世界的にもユニークな「マリンIT」の研究を行っています。

マリンITとは、研究者と漁業者たちが一体となって切り拓き、お互いのノウハウを組み合わせた近未来型の水産業を実現するための情報技術のこと。具体的には、研究者が水産資源と海洋環境を可視化させ、その可視化されたデータをもとに漁業者は持続可能な水産業に取り組みます。

漁業者は組合があるものの、基本は「一人親方」の世界。自分たちが得てきたノウハウを基に漁を行うのが普通でした。それだけに、マリンITのような研究者と漁業者が連携して取り組む動きは、世界的にも珍しいことだそうです。

そんなマリンITの成果として、次の3つの技術が形となっています。

・「ユビキタスブイ」
海水温のほか、風向風速に対応する流向流速も観測可能な海洋観測ブイ。観測データを集約すると、水深帯の状況まで把握できるようになります。
・「マリンブロードバンド」
無線LANシステムを用いた沿岸の無線インターネット環境。これにより、小型漁船上でもノートパソコンなどでインターネットが使える環境が整います。海のIoT化を進めていく上では必須の技術です。
・「デジタル操業日誌」
操業日誌をタブレット端末(iPad)でデジタル化したもの。入力項目は操業開始時刻、操業終了時刻、漁獲量の3つだけと、漁業者が簡単に扱えるようになっています。これにより資源量が回復、漁業者主体の資源管理の効果も表れています。

同大学では今後、他地域の漁場でもマリンITを展開していく予定です。海にもIT革命のビッグウェーブが押し寄せようとしています。


<参考・参照元>
報道発表資料 : 東松島市の牡蠣・海苔養殖漁場でICTブイの実証実験を開始 | お知らせ | NTTドコモ
本になったマリンITの軌跡 『マリンITの出帆』著者・和田雅昭教授インタビュー | 公立はこだて未来大学


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