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引用元:Roman Korotkov|Shutterstock

昨今、文字だけが独り歩きするほど、IoTブームは過熱気味になってきています。その結果、必要性が感じられないスマホと連動しただけのデバイスは増え続けています。また、IoTプラットフォームが乱立するという課題も出てきました。どんなビジネスにも共通していますが、ユーザーの目線を置きざりにし、ブームにかこつけただけの製品ではいい結果は得られないでしょう。今後は企業姿勢や企業哲学などがより問われていく時代に入っていると言えます。

そんな中、お手本としてぜひ参考にしたい企業が小松製作所(以下コマツ)です。同社がIoTに取り組み始めたのは、なんと15年以上前のこと。IoTの活用事例を挙げるとき、必ずと言っていい程名前が登場する同社の動きを振り返ってみます。

現状の課題に目を向けたら、IoTになっていた

コマツではIoTはもちろん、ICT、ビッグデータ、ドローン、クラウドコンピューティング、スマートコンストラクションに至るまで、あらゆる面で先進的な取り組みを行ってきました。Amazonがこうした取り組みをしてきたというのは有名ですが、日本企業では異例中の異例です。

では、同社は未来を見据えてこのようなビジョンを描いて来たかと言うと、どうもそういうわけではなさそうです。同社の事例集などを読むと、むしろ現在起こっている問題点、顧客の課題に目を向けて、自社の製品や体制を変えていったら、それが今で言うところの「IoT」に繋がっていたことがわかります。最近になって、世の中みんながIoTやクラウドだと言い始めていますが、コマツからしたら「あれ?それってウチが15年以上前からやっていることだな……」という気持ちかもしれません。

建設機械の盗難事件がキッカケ

そもそもの発端は、1990年代半ばに多発した「事件」でした。当時、建設機械を盗み、それでATMを破壊するという、かなり荒っぽい強盗事件が頻繁に起こっていました。それ以降、コマツでは建設機械の盗難対策にも力を入れるようになりました。具体的に言うと、建設機械にGPS装置を取り付け、携帯電話網などの無線通信ネットワークを使って、位置情報や車両情報などを収集するシステムのこと。これによって建設機械がどこにあるのか、どういう状況なのかが把握できるようになったのです。

その後1998年に実機実証テストを行い、1999年より国内のレンタル建機向けに市場導入を開始。さらにコマツは思い切った戦略として、2001年に国内市場、2004年に中国市場でこの装置を標準装備させることを決断。それ以降も順次グローバル市場で標準装備化を進めてきました。同様のシステムは競合他社でも採用していましたが、ほとんどがオプション装備。それがコマツの場合は標準装備なのですから、当然のごとくユーザーから多くの支持を集めることになりました。もちろん装置を取り付けるためにはコスト的なデメリットもありましたが、その取り組みは徐々に実を結び、販売実績の大きな伸びとコマツの優位性を確立する結果に至ったのです。

このシステムは「KOMTRAX(コムトラックス)」と名付けられ、コマツのIoT成功事例を語るとき、必ず挙げられるものです。今ではさらに先鋭化し、保守管理から省エネ運転に至るまで顧客にさまざまなサービスを提供しています。

やはりユーザー目線が大切

その後も、コマツはIoTを駆使した新規事業を次々に展開していきます。自動制御が可能な油圧ショベル、鉱山向けの無人ダンプトラック、施工現場で工事に関わる人・建機・土までもがクラウドにつないで見える化するICT事業「スマートコンストラクション」など、どれも見た人をうならせるほど、洗練されたシステムです。

同社の取り組みからは、危険な鉱山で働く人の命を守るため、人材不足にあえぐ建設業界で女性や未経験者でも建設機械を操縦できるようにするため等といった“徹底してユーザー目線に立つ”という姿勢が強く感じられます。ユーザーの悩みや不安を取り除きたいという非常にシンプルでありながら強い渇望から生まれたコマツの歴史は、我々が生きるこれからの時代にとって大切なものを示してくれているようにも思えます。