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前回は「儲かるコメ」を作るためには何が必要なのかということについて、コメの高付加価値化を挙げてみてきました。後編では、コメの付加価値を上げるために行っているIoTを活用した取り組みについてみていきます。農業IoTの事例から儲かるコメづくりのヒントを探ります。


農業IoTの動向

IoTを活用して農業従事者が儲かる構造を作る「アグリカルチャー4.0」という日本総合研究所の提言にもあるように、IoTの農業への活用が注目を集めています。

規制改革等の施策を総合的に実施する国家戦略特区では、ドローンに関連する実証事業が可能となりました。国家戦略特区で大規模農業の改革拠点として指定されている新潟県新潟市では、新潟市、NTTドコモ、ベジタリア、自律制御システム研究所(ACSL)、エアロセンスが水田センサーとドローンを使った水稲のモニタリングや栽培管理の実証実験を行います。これまで病害虫の発生については、目視で確認をするか、水稲向け水管理支援システムの「PaddyWatch(パディウォッチ)」などのセンサーを活用してきましたが、今回ドローンに搭載されたカメラにより、上空からでも水田の情報を得ることができるようになります。また、上空から撮影された画像を詳細に解析することで、より高精度な収穫予想も可能になります。
<参考・参照元>
ドコモ・ベジタリアなど、新潟市における「ドローン実証プロジェクト」に関する連携協定を締結

また、九州大学大学院農学研究院が主体の研究組織「農匠ナビ1000コンソーシアム」が、スマート農業のベンチャー企業であるイーラボ・エクスペリエンスと共同で、国内4つの大規模農家の持つ1000の水田に対してセンサーによる水田管理の実証実験を開始しています。
<参考・参照元>
1000の水田にセンサーネット IT農業を全国へ

まったく遠い存在であったように思えたIoTが、農業においても活用可能な存在として認識されつつあるようです。
それではコメの高付加価値化に取り組む事例を生産から流通に渡りご紹介していきます。

Apple Watchで水田管理

熊本県阿蘇市の内田農場では、取引先の要望に合わせてなんと15品種のコメを生産しています。同社では、取引先の要望に合わせて生産する“B to B”の事業展開を行っていて、例えば取引先が牛丼屋チェーンであれば、「タレが染み込みやすいやわらかいご飯」を栽培し提供しています。
内田農場では、コメの価格の下落に危機感を感じ、コメの味のカギとなる水の管理の効率化と精度向上を目的として、上記でご紹介したPaddyWatchを導入。水田にセンサーを差し込み、そこから送られてくるデータをApple Watchでモニタリングすることで、55ヘクタールもある水田の見回りをより効率的に行うことができるようになっています。
内田農場のように広大な水田を持っている場合は、5~6km離れている水田もあり、燃料代、人件費にはかなりのコストがかかります。
内田農場の社長・内田智也氏は以下のように述べています。

“今まではお米を作ればみんな食べてくれたし、農協に出せばよかったし、稲作農家は困っていませんでした。でも2014年から2015年にかけてコメの価格が2割安になり、ようやく『まずいな』と思い始めて。商売として農業を成り立たせるためにも効率化は必須でした。”
※引用元:「Apple Watch」でコメ作り――熊本・阿蘇の若手農家が取り組む「スマート農業」の可能性

ITとは無縁のようなイメージが根強い農業ですが、iPhoneなどに触れてきた内田氏のような若い世代を中心に導入のきっかけを掴むことで、IoT化が一気に進みそうな予感がしますね。

QRコードでトレーサビリティを実現

消費者が農産物の付加価値をより強く感じるにはトレーサビリティがカギとなってくるようです。
農業ベンチャーのUPFARMは、2015年12月にコメの流通プラットフォーム「米百選」を設立しました。米百選の特徴は、全国で高品質のコメを作る農家が希望する売値で高級スーパー等に卸すことができる点にあります。

その他にも新しい取り組みを行っている同社では、“生産や流通においての見える化”にも新風を巻き起こしています。農家から出荷し、精米工場からパッケージにしてスーパーに出荷するまでの一連の流れを、QRコードをスマートフォンで読み取らないと次の工程に進めないという新しい仕組みを導入したことにより、混ぜ物による水増しなどの不正ができないようにしたのです。消費者からみても、QRコードをスマホで読み取るだけで商品説明や生産地、流通の流れなどまで簡単に確認することができるため、手のひらでコメのトレーサビリティによる安心を得ることができます。

このプラットフォームが開発された背景には、高品質ブランドのコメに品質の低いコメを混ぜる「コメ偽装」の例が後を絶たないという現実があることと、乱立するブランドが消費者に、“本当においしくて信頼できるコメ”は一体どのブランドのものなのか?という疑問にしっかり答えられるだけの裏付けを提示できていないという問題が背景にあります。
米百選の取り組みにおいては、「米・食味分析鑑定コンクール:国際大会」で優良と認められたブランドに対して参加を呼びかけるという動きを見せており、流通するコメの高い品質を保とうと努力する姿勢が見受けられます。
UPFARMの社長・高橋隆造氏は以下のように危機感を述べています。

消費が低迷し、価格が下落。儲からないから旨いコメを作ろうとしなくなり、若い働き手を呼び込むだけの魅力が失われていく。当然高齢化が進み、耕作放棄地が増える。悪循環に陥っている。
※引用元:QRコードで「産地偽装」撲滅 食ベンチャーが挑む米の流通改革

UPFARMの行っている取り組みは、業界にとっても私たち消費者にとっても新しい食の流通の形を提示してくれています。コメ以外の食品にもこういったITを利用したトレーサビリティの実現は課題となってくるでしょう。

「米びつセンサー」でおいしいコメ管理を支援

おいしいコメが消費者まで届いたとして、消費者が自宅などでおいしくコメを食べるためにはどのようにIoTが活用されているのでしょうか。2016年に創業した米ライフ(マイライフ)は「米びつセンサー」で家庭のコメを正確に管理しています。コメの蓄積量が少なくなった場合は米びつのふたの裏などに取り付けたセンサーが感知して、自動的に発注。受注を受けてから精米するので、鮮度の高いコメが家庭に届きます。コメの残量管理だけでなく、温度や湿度で一番おいしくコメを食べることができる状態や、炊くときの適切な水の量を知らせます。
今後、米ライフでは全国に埋もれている高品質なコメを発掘してブランディングし、おいしいコメを一番おいしい状態で届ける仕組みを作ることを目指しています。
米ライフ代表取締役社長・富田 航大氏は以下のように述べています。

減反政策の転換に伴う家畜食料米の増加や、食の多様化による需要量の減少により、おいしいお米を生産する農家が、目に見えて少なくなっています。日本の主食であるおいしいお米を、支援する必要性を強く感じ、「米びつセンサー」事業を立ち上げました。
※引用元:【Interview】日本のお米をIoTで支援!高精度な米管理システム「米びつセンサー」に迫る

一見随分な距離があるように感じてしまう農業の分野においても、各社がさまざまな農業×IoTの取り組みを行っていることが分かりました。こういった取り組みによる影響は農業従事者たけにとどまらず、私たち消費者の生活においても大きな影響を与えることとなるでしょう。農業IoTで生産性が高まるだけでなく、結果的によりおいしくて安心できるお米が簡単に手に入る時代にはとても心が弾みますね。

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