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スマート林業が向かう未来~後編~

作業の効率化だけでなく、新しいビジネスの創出も見込まれ、産業の復興に期待が集まるスマート林業。ICTは具体的に林業のどのような場面で活用されているのでしょうか。先進的な取り組みを中心に見ていきたいと思います。

 

GISで効力を発揮するクラウド

パスコは「森林GISクラウドサービス」を2016年秋に提供開始予定です。パスコは地域別に市町村などで森林マネジメントシステムを開発実績がありますが、そういったシステムから共通仕様を抽出して、全国標準のシステムを提供します。全国標準のシステムとすることで、森林データの標準化を図る狙いもあります。
林業でのクラウド活用は、やはり森林のデータを管理できることが大きなメリットとしてあります。GISとは地理情報システム(Geographic Information System)のことで、空間を座標軸として森林基本図、航空写真などを蓄積します。蓄積したデータをもとに、位置を指定して一本一本の木の生育状況を取り出したり、伐採率や材長をパラメータで指定することで集材本数などをシミュレーションしたりすることができます。
パスコ、森林管理・林業支援「森林GISクラウドサービス」の提供開始

観測や植林に活躍が期待されるドローン

クラウドが森林に関する情報を管理する器であるとすれば、ドローンはその器に入れるデータを採取することが期待されています。
第1回森のドローン・ロボット競技会」が2016年4月に大分県で開催される予定でしたが、熊本地震により残念ながら延期されました。この競技会は、木々や枝の障害物が至るところにあり、突風が吹くことも多い森林で安定した飛行に課題を持つドローンの性能向上を図り、これまで人海戦術で行ってきた森林の調査・測量を効率化することを目的としています。
また、ドローンは植樹作業にも期待されています。米オレゴン州で2015年に設立した「DroneSeed」のドローンは空中から植林を行う土地にあらかじめ水をまき、ドローンから撮影した3Dマップを元に植林に最適な位置を割り出すことができ、肥料や害虫防除剤を入れた種子カプセルを地中に植えていくことができます。

非力な人でもロボットを活用して林業に従事できる?

急斜面で作業することの多い林業は高いスキルが必要なだけでなく、重労働で、時には危険が伴います。そのため、高齢化が進む従事者にとっては負担も重くなっています。
住友林業ではパナソニックグループのアクティブリンク社と共同で「林業用アシストスーツ」を2017年に向けて実用化することを発表しました。このスーツは重量が15kgありますが、「スーツを着る」というより「スーツの上に乗る」ように装着するため、この重さは装着者の負担となることはありません、スーツが体幹の動きを察知して次にやりたい動きをサポートします。こうしたスーツが実用化できれば、高齢者や女性なども就業可能となり、従事者の増加も期待できます。

また、伐採した後の木の運搬の効率化も大きな課題です。オーストリアのKONRAD製「PULLY」は45度までの傾斜や地面のデコボコに対応し、伐採した木材の集材が遠隔操作で可能になりました。集材作業が効率化されるだけでなく、作業員を危険から守るという側面もあります。

高知県佐川町は、「発明職員」の募集を発表しました。これは地域の森林や農産物を発明職員の持つデザインやプログラミングなどのスキルと掛け合わせて新商品・新サービスを創出していこうとするものです。

こうした地域の森林とICTやデザインとの融合の取り組みが行われています。まだまだ始まったばかりですが、林業の未来は少しずつ明るくなっているようです。