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「儲かる農業」とIT~前編~

約2万3千年前に始まったともいわれる農業。生きるための手段として今日まで受け継がれてきた農業は、全世界において、また、この島国の日本において、大きく転換しようとしています。生きるための農業から「稼ぐ」ための農業へ。その変革になくてはならない「農業のIT化」についてご紹介しましょう。

農業が変革を迫られる背景とは

農業は2009年に農地法が一部改正され、「農家のための農業」から「誰でもできる農業」への転換期を迎えました。しかし、農業参入コンサルタントの山下弘幸氏によるとその時から農業に参入した企業の8割が失敗しているといいます。失敗の理由で一番大きなものは「頑張って力仕事をすれば儲かる」という考え方であって、マーケットインの思考で「儲かる仕組みを作る必要がある」とコメントしています。

農業のリスクヘッジはきりがないので、そこにIT技術を費やすよりも、「○月○日までのトマトの生産高は○トンになる」という収量予測を常に発信できる企業のほうが、マーケット側からの信用力が増し、次のビジネスに繋がりやすいのです
「農業ビジネス」参入企業の8割が失敗してしまう理由|ガジェット通信

また、少子高齢化による農業の担い手の減少、耕作放棄地の増加も深刻な問題です。農業を収益の面で魅力あるものにしないと、担い手の増加は見込める状況にはならず、このままいくと将来の食料供給に危機を迎えるでしょう。

農業の儲かる仕組みとは

それでは儲かる仕組みとはどのような策が考えられるか見てみましょう。

  • 6次産業化による収益構造の変革

ひとつは農林水産省が推進している農業の6次産業化による収益性の改善です。6次産業とは、農業経済学者の今村奈良臣氏が提唱した造語で、1次産業の農業を2次産業(製造)、3次産業(小売業)と組み合わせて多角的に事業を展開することを指しています。つまりは生産した農産物を商品化し、流通する仕組みを作る、または農園の観光地化で付加価値をつけることで利益を確保する取り組みです。
これらの取り組みが農林水産省に認定された場合は、資金調達や6次産業化プランナーの派遣などの支援が受けられます。
農林水産省によると、認定者の7割は認定申請時と比較して売上が増加しており、一定の効果が確認されています。

  • IoTによる外的リスクの軽減

もうひとつは世界的にも注目されているIoTによる生産性向上です。田植機が遠隔地にいる専門家と通信することで、機械の保守はもちろん、肥料や収穫について専門家のアドバイスをもらえるようになり、生産を効率化できます。将来的には無人で田植機を動かしたり、作物の状況をセンサーで管理したりすることによって重労働を減らして農業人口の間口を広げることも期待されています。
さらに、勘と経験に頼ってきた種まきから収穫までのプロセスについて、データ分析により生産量を予測し、効率的に生産することができるようになります。このようにIoTはアイデア次第で農業のさまざまな面から効率性に対してアプローチでき、可能性が広がる分野です。

  • 4次産業化で「個の力」を活かす

従来の農業では主に農業協同組合(JA)が各農家の生産物を取りまとめて出荷する方法をとっていました。しかし、「鈴木さん農家が作ったコメ」と「斎藤さん農家が作ったコメ」は、実際は違う品質のはずです。鈴木さん、斎藤さん農家の持つ力をそれぞれ活かしていこうとする考え方が4次産業化です。佐賀大学農学部と佐賀県農林水産部、オプティムは、生産から加工、流通に至るまで一体化して行う6次産業化に対して、1次産業と3次産業を組み合わせた4次産業化という言葉を定義しました。極力人手をかけずに栽培し、流通経路で生産者のトレースが可能な「スマートやさい」によって小規模農家でも収益をあげる取り組みを行っています。
6次産業化やIoTは個人で取り組むのは難しいですが、4次産業化であれば個人でも実現可能です。個人の持つ力を活かして農産物に付加価値をつけていうという取り組みも始まっています。

このように現在さまざまな取り組みが行われている農業ですが、具体的にどのようにITを使っていこうとしているのか、次回はその事例をご紹介したいと思います。

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